TRPGシナリオ作りのコツ【演出編】
2026年11月1日 作者:一乃瀬友樹
はじめに
この記事は、シナリオ作成相談会で繰り返し出てきたコツをまとめたシリーズの二本目、演出編です。
素材は、『CCFOLIAでオンラインTRPG体験会 テブラプレ』内で開催している「シナリオ作成相談会」で話している内容をざっくりまとめたものです。
シナリオ作成相談会は、参加者が持ち込んだシナリオやアイデアに、みんなで意見を出し合う会です。システムは基本的には何でもOKで、幅広く扱っています。
シリーズの構成
- 基本編(1〜9節):どのシナリオにも当てはまる土台。初めて作る人はここから。
- 演出編(10〜13節):遊んでいる最中の体験を整える工夫。←この記事
- 応用編(14〜16節):何年も記憶に残るシナリオにするための仕掛け。
演出編では、恐怖やひどい目の入れ方、言葉で伝える描写の注意、結末と選択肢の見せ方、アドリブで回すための準備を扱います。シナリオの骨組みがまだの方は、先に基本編からどうぞ。
▶ 基本編:TRPGシナリオ作りのコツ【基本編】
10. 恐怖も痛みも慣れる。数を絞り、味を変える
恐怖判定やひどい目は、回数が増えるほど効き目が落ちます。プレイヤーが慣れて、「またか」「来た来た」と笑いに変わっていくからです。
ホラーなら絞る
毎シーン怖がらせるより、ピンポイントに数を絞って怖い目に合わせるほうが、緊張感が保てます。場面の切り替えが多すぎると冗長にもなります。恐怖を一つの場面に凝縮するのも手です。
たくさんひどい目に合わせるなら、慣れを前提にする
何度もPCをひどい目に合わせるシナリオは、どうしてもコメディ寄りになります。ホラー映画『ファイナル・デスティネーション』シリーズも、後半になるほど「次はどんな死に方か」を楽しむ見方になっていきます。
- PCはシリアス、プレイヤーはブラックコメディ、という空気で作ると破綻しにくい。
- 最初は丁寧にシリアスに、後半はピタゴラ装置のような意外な展開で、と緩急をつける。
- ひどい目のバリエーションを用意しておく。仕掛ける側の性格も表現できる。
- 入れるタイミングは「サイクルが変わったら一回」程度でよい。区切りにもなる。
応用編で扱う当事者性の仕掛け(第16節)も同じです。同じ手口を繰り返すと、プレイヤーは身構えます。
11. TRPGは映像ではない
TRPGの描写は、口で言わなければ伝わりません。映像のように「観客だけが違和感に気づく」演出は、ほぼ使えません。
映像表現として演出は難しい
映画なら、例えば鏡の中の主人公が本来の主人公と別の動きをするような、視覚に訴える演出を作れます。観客は自分で気づくので、ぞっとします。TRPGでは「鏡から目を話したとき、鏡の中のあなたが、あなたのことをじっと見ています」と説明するしかありません。これは「背後に人影が立っています」と変わらない描写です。説明することで、興覚め感が出てきてしまうこともあります。
それでも言わなければ伝わらないのです。必要な描写はちゃんと伝えましょう。
リアルに寄りすぎないよう、温度差をはっきりさせる
恋愛や結婚など、身近な題材で「やばい人」を描くときは注意が必要です。中途半端に描くと現実の人間の匂いがして、「これ、私のこと?」と感じる人が出ます。
- 犯罪には届かないが、「それはちょっと引く」程度に留める。
- 最初に「理想的な人物」としてしっかり印象づけ、そこから落差をつける。
- キャラクターとして徹底的に造形し、書き分けをはっきりさせる。
PCではなくプレイヤーが「引いてくれる」なら、それはリアルに寄っていない証拠です。ギャグとして切り離して楽しんでもらえます。
題材の使い方
- 有名な物語をモチーフにするときは、それらしさを極力抜いて「裏テーマ」に留めると、美しく仕上がる。拾いつつ薄めるのは、実は難しい技術。
- 史実や伝承を使うなら、誰でも知っている程度の題材から入る。マイナーな題材ばかりだと「それは何?」で止まってしまう。
- 伝承上の人物名は「役職名」として扱うと、PCに割り当てやすい。同じ名で呼ばれた人物が複数いたことにすれば、伝承の食い違いも気にならない。
- 時代設定を使うときは、題材が成立した時期を一度確かめておく。
- 既存のルールの手触りを、テーマに読み替えると強い。テクスチャを変えるだけでなく、テーマに合った数値ギミックを一つ足すと遊びとして手応えが出る。
- 「そのシステムでなければできないシナリオ」を目指すと他に換えがきかない作品になる。題材に合うシステムを選ぶこと自体も、シナリオ作りの一部。
- タイトルに困ったら、好きな歌や映画、古いSF小説の題名を下敷きにするとよい。オマージュは、知らなくても遊べる程度の塩梅に留める。
12. 結末と選択肢の見せ方
TRPGでは一般に、結末を決め打ちしないほうがいいです。それがハッピーエンドだとしても、バッドエンドだとしても、決められた結末しかないものは「何をしても無駄」だと、ゲームをする意味がないと感じる人がいるからです。
ただし、最初に結末を見せてしまうという手があります。たとえば、PCが闇に落ちる場面をオープニングで描き、そこから過去へ戻って「これはそうなるまでの物語です」と始めます。プレイヤーは納得した上で遊び始められます。トレーラーに「これは君が○○になるまでの物語」と書いてもよいのです。
自由度は広ければよいわけではない
私は、TRPGの自由度は少ないほうがよいという立場です。ハンドアウトやサイクル制は、まさに自由を絞るために生まれた仕組みと考えることもできます。自由な道を好き勝手に走る必要はありません。決められた道を自分らしく走れれば、それで十分です。
「絶対に選ばない選択肢」を見せる
協力して遊びたい卓でも、迷いや対立の余地を消す必要はありません。むしろ、選ばないとわかっている選択肢をあえて示すと効果的です。
- 協力型寄りに作ったうえで、「本当の使命を対立する内容に変えてもよい」と提示する。PCはそれを選ばないことで、協力する決意を固められる。
- 選ばなかったとしても、プレイヤーには「自分で選んだ」という実感が残る。レールに乗せられた感じが薄れる。
- 選択肢を示すと、人はそれ以外のことで迷わなくなる。自由に悩ませるより、話がずっと早く進む。
- 「何もしなければ悲劇が起きる」形にしておくと、プレイヤーが自分の手で状況を変えた手応えが強くなる。
クライマックスの勢いを止めない
- 最終決戦を連戦にするなら、間に休憩や別の回を挟まない。モチベーションが高いまま次へ進む。
- リソースが足りなければ、その場で回復や強化の機会を与える。これ自体を演出にできる。
- 連戦になることは事前に伝えておいてよい。「最初の戦いで使い切っても回復する」とわかれば、全力で戦える。
- キャンペーンの幕引きでは、全員で一つの解決策を考える場を作ると、カタルシスが大きい。
13. 舞台を用意して、アドリブで回す
シナリオを細かく作り込む代わりに、「舞台」だけを用意して、あとはアドリブで回す方法もあります。とくに配信や、初めての人と遊ぶ場面で力を発揮します。
物語ではなく、舞台を作る
- 「こういう場所があり、こういうことができる」という舞台の設定だけ決めておく。
- そこに、PCが自分の物語を持ち込んでくる。PCが変わるたびに、別の物語が生まれる。
- 同じ舞台で短編をいくつか遊んだあと、登場したPCを集めて長編を遊ぶ、という段階の踏み方もできる。
- 1対1のほうが、アドリブで扱う人数が少なくて楽。
行き先だけ決めて、道中は任せる
白地図を渡されて「好きに動いて」と言われるより、駅から家までの道を決めておくほうが楽です。道中に何があるかは、その場で決めればよいのです。
- ゴールと、そこへの大筋だけを決めておく。
- 展開の分かれ道や寄り道を、ダイスで決める表にしておくと、同じ舞台でも毎回違う物語になる。何度遊んでも、見る人も飽きない。
- 物語の枠(時系列と「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ」)が揃っていれば、PCが何をしても対応できる。枠が揃ったら、そこからは削らず、足すか順番を入れ替えるだけにする。
アドリブの材料は、キャラクター作成で集める
キャラクター作成は、プレイヤーと会話しながら行うのが一番です。「このキャラクターなら、これが得意そう」という話が出たら、それを活かす判定の場面を必ず用意します。
- 成功すれば褒める。失敗しても、それをネタにして楽しむ。どちらに転んでもおいしい。
- 判定を通して、そのキャラクターの魅力が見える場面を作るのがGMの仕事。
作り込み型を否定するわけではありません。ただ、楽ができる方法を知っておくと、遊べる回数が増えます。一本に一か月かけていたら、二か月に一回しか遊べません。
演出編のまとめ:書き上げたら確かめること
- 恐怖やひどい目を入れすぎて、慣れさせていないか。
- 言葉でしか伝わらない描写を、きちんと言葉にしているか。
- 身近な題材の「やばい人」が、リアルに寄りすぎていないか。
- 結末を決め打ちにせず、プレイヤーが「自分で選んだ」と感じられる形になっているか。
- クライマックスの勢いを止める間を挟んでいないか。
おわりに
演出編はここまでです。次の応用編では、何年も記憶に残るシナリオにするための、一歩踏み込んだ仕掛けを扱います。
この記事のもとになった「シナリオ作成相談会」は、オンラインTRPG体験会『テブラプレ』の企画のひとつです。テブラプレは、DiscordとCCFOLIA(ココフォリア)を使って遊ぶオンラインTRPGの体験会です。ルールブックがなくても、カメラがなくても参加できます。TRPGが初めての方も、経験者の方も歓迎しています。マイクを使わず文字チャットで遊べる枠や、ツールの使い方を学べる説明会もあります。
演出の工夫は、実際に遊んでみると一番よくわかります。プレイヤーとしてさまざまな卓に参加してみることも、シナリオ作りの近道です。日程や予約方法は、公式サイトにまとめています。
▶ テブラプレ公式サイト:https://teburaplay.com/